増田悦佐さんより~「米中地獄の道行き――悲惨ながらも平和な大国主義の末路」シリーズその8 |
UPDATE 2016.12.05 |
資本主義は死んだ……製造業を道連れにして
資本主義ということばは、市場経済を積極的に支持する立場の経済学者や思想家が使いはじめたのではないという事実をご存じだろうか。このことばを世界で初めて用いたのは、アダム・スミスでもデービッド・リカードでもなく、カール・マルクスだった。市場経済の擁護者たちは「市場経済では、資源はもっとも切実に必要とされるところに回り、その結果一国の国民、あるいは全世界の人類は最大限の豊かさを享受するようになる」と主張していた。それに対して、マルクスは『資本論』の執筆過程で「本来、人間を豊かにするために蓄積された資本が自己増殖を開始し、人間はその資本の自己増殖のために使役されるようになる」と批判して、「自己疎外」と「資本の物神化」こそ市場経済最大の問題だと断定した。