増田悦佐さんより〜「危機と金(ゴールド)」 シリーズその4 |
UPDATE 2010.07.23 |
新興国の意地と老大国の見栄、金本位制を崩壊させたのはどっち?
19世紀末から第一次世界大戦が起きるまでの約20年間は、「古き良き時代」だったという評価が定着している。たとえば、こういう感じだ。
国際金本位制がほぼ理想的に運営された。世界経済は自由貿易と為替の安定を基礎にして、健全な発展を遂げた。この時期はしばしば「古き良き時代」と呼ばれる。日本は古き良き時代に国際社会に参加したことになる。
鯖田豊之『金(ゴールド)が語る20世紀——金本位制が揺らいでも』(1999年、中公新書)、53ページ
この「古き良き時代」はなぜ失われ、金本位制はなぜ崩壊してしまったのだろうか。結局のところ、ひと握りの政治的な狂信者による暗殺事件が、だれひとり望んでいなかったおそろしくコストの高い大戦争を呼び起こし、その大戦争によって犠牲にされたさまざまな制度や習慣のうちでも、もっとも貴重なものが金本位制だったということではないだろうか。