警報——MFグローバル破綻の意味 2011年10月31日 |
UPDATE 2011.11.01 |
原作:ボブ・ホイ
翻訳:増田悦佐
MFグローバルが債務を履行できない状態に陥っていたことが発覚したのは、ユーロ圏の問題は収束しつつあるという最近のニュース報道とまっこうから対立する事実だ。
実際に破綻することになると、MFグローバルの債務不履行額はかなり巨額となる。末尾に収録したウォールストリート・ジャーナルの報道によれば、2000年以降で起きた債務不履行の中でも、おそらく8番目に大きな破綻事件ということになる。
このニュースを聞いたときの最初の印象は、2007年6月15日にベアー・スターンズ証券が傘下のヘッジファンドのひとつが破綻したと発表したケースとの類似性だった。結局、サブプライムローン・バブル崩壊の先駆けだったこの破綻事件は、その後次々と噴出した破綻事件と比べれば小さなものだった。
もし、MFグローバル事件が債務不履行総額では小さなものだったとしても、重要な警報と見なすべきだろう。
しかし、債務不履行総額は巨額なのだから、これは非常に大きな警報だ。
我々は10月初旬に、米ドル指数(DX)が弱まり、その結果今まで惨憺たるパフォーマンスをしてきた多くの金融商品が良いパフォーマンスをするだろうと予測していた。乱高下はあるものの、全体としては来年初頭まで金融商品の値動きはよいだろうとも見ていた。
ところが、SP500の値動きで見れば、なんと月間パフォーマンスでは1974年以来最高の急騰ぶりを示して、我々が3ヵ月くらいで到達するだろうと見ていた上昇をたった3週間で達成してしまった。
日曜日(10月30日)に刊行したチャートワークスでは、DXが重要な節目の安値を付けたことを指摘している。
まとめ
おそらく来年の1月までラリーが続く中で到達するはずだった上昇幅の大半は直近の驚異的な急騰で達成してしまった。ユーロ圏の問題が「解決した」というニュースの洪水は、考えられるかぎりの巧妙さでショーアップされたので、カラ売り派にはすさまじい買戻し圧力がかかった。
だが、ユーロ圏問題解決という本をもう少し詳細に分析すると、本文は表紙ほど魅力的な内容ではないことがばれてしまう。熱狂が冷めた直後の1日の相場は、株も商品も社債もすべて売り叩かれた。
DXは金曜日(10月28日)の引け値75に対して今日(31日)は、76.2まで買い進まれた。76.7を超えると、短期的な上昇基調が確立されることになる。
いつも相場の地合いの良さを測る尺度として信頼できるゴールドの対銀相対価格は、今日も若干の上昇を示した。直近の安値は木曜日(27日)、金曜日の49.4だったが、今日は50をほんの少し超えたところまで行った。今のところ大した動きではないが、もしこれが53を突破するようだと、どこかで流動性危機が起きている兆候だろう。
もう一つの注目すべき指標はイタリア10年債の金利動向だが、これも直近のチャートを末尾に付けておく。
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ウォールストリート・ジャーナル
ネット版記事
2011年10月31日、午前10時38分(東海岸時間)
MFグローバル、史上10位以内の巨額破綻となる可能性大
元ゴールドマン・サックスCEOジョン・コーザイン率いるMFグローバルが、本日破産法に基づく債権債務の保全を当局に申請したが、この破綻事件はヨーロッパ諸国の国債に関するまずい賭けの犠牲となった金融機関の破綻事件の中でも突出した規模になりそうだ。
破産法11条による債権債務の保全を申請したMFグローバルは、同時に歴史上でもワーストテンに入る巨額破綻事件の主役という不名誉な立場に身を置くことになりそうだ。下に紹介するのが、BankruptcyData.comという調査会社の資料で見たそれぞれの企業が破産申請をする直前に保有していた資産規模の一覧表だ。
MFグローバルが破産申請をした時点での資産規模をこのリストと比較してみよう。アメリカの破綻事件の歴史の中で、現在までは8位にランクされているクライスラー社を鼻の差でかわして、8位に滑りこむことになりそうだ。
1位:リーマン・ブラザーズ・ホールディングス、2008年9月、破産法申請時の資産総額6910憶ドル
2位:ワシントン・ミューチュアル、2008年9月、同3279憶ドル
3位:ワールドコム、2002年7月、同1039憶ドル
4位:ゼネラル・モーターズ(GM)、2009年6月、同910憶ドル
5位:CITグループ、2009年11月、同804憶ドル
6位:エンロン、2001年、同655憶ドル
7位:コンセコ、2002年、同614憶ドル
——:MFグローバル、2011年9月現在の総資産410億ドル
8位:クライスラー、2009年4月、破産法申請時の資産総額393憶ドル
9位:ソーンバーグ・モーゲージ、2009年5月、同365憶ドル
10位:パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック、2001年、同361.5憶ドル
出所:過去10大破綻事件に関してはBankruptcyData.com、MFグローバルに関しては、SECへの破産法申請書類より。
【イタリア国債10年物の金利動向、2006年末から直近まで】